【意図設定】 引き寄せも願望ノートも続かなかったのに「会社休みます」と言えた日《みんなの物語》

これは忘れていた「本当のわたし」の感覚を思い出す『目覚めの冒険物語』
今回のテーマは『意図』

注)どこかの誰かの物語です♡

こなすだけの毎日

「今日も、こなすだけの一日になるんだろうな。」 わたしがいなくても、普通に回る一日。

仕事が嫌いなわけじゃないけれど、心が踊るわけでもない。 職場の空気はいつも鉛のように重く、思いきり笑った記憶なんて、ずいぶん長いこと……ない。 ただ、ずっと“温度の低い時間”が続いている。

新しくできたケーキ屋の『玄米粉のロールケーキ』。
本当は食べてみたい。
だけど「今日はいいや」「また今度でいいか」と、遠慮して通り過ぎる。

休みの日も同じだ。
「混んでたら嫌だな」「お金かかるし」 そんな理由を並べてスマホを眺めているうちに、いつの間にか夕方になる

 

日常のわたしは、決して怠けているわけじゃない。
仕事も、家族も、町内のことも、役割はぜんぶ果たしている。 なのに、腹の底からのパワーが出ない。
変わりたくて、引き寄せも、エイブラハムも、バシャールも、ノート術も、学んだ。
迷ったときは、なにかとタロットを引いていた。

気づけばカードを見ただけで、プロ並みに意味が分かるようになった。

「これは変化のサイン」
「はいはい、手放しね」

頭ではすぐ答えが出るのに、現実はピクリとも動かなかった。

「今年こそは」と期待しては、何も変わらない毎日に絶望する。
そんなことを繰り返すうちに、いつの間にかわたしはこの“檻”に慣れてしまった。
止まっていれば、傷つかなくてすむ。 無難に過ごすのも、これはこれで”あり”なのかもしれない。

ブレーキを踏んだ

けれど、季節は止まらなかった。気づけば桜が咲きはじめ、見慣れた景色がほんの少しピンク色に変わっている。
いつものように車を走らせ、職場に向かっていたのに、わたしはなぜかブレーキを軽く踏んだ。

頭の中に、小さな声がよぎる。

「……仕事…行きたくないな」

その瞬間、すぐ別の声がかぶさる。

「ダメダメ、そんなこと思っちゃ」
「ちゃんと働ける環境があるだけで、ありがたいんだから」

アクセルを踏み直そうとした。そのときだった。古びた扉が突如現れた。

「え?なんでこんなところに?」

胸の奥が、どくん、と強く鳴った。よく見ると、扉には英語で文字が書かれていた。__Secret Mind Lab__

「シークレット…マインド…ラボ?」

思わず声に出して読んだ、そのときだった。視界の端が、ふわりと光った気がした。

次の瞬間、金色とも白ともつかない光をまとった龍が、ぬっと現れた。扉の近くには黒髪の女性。静かな瞳で、ただこちらを見てやわらかく微笑んでいる。

不思議な再会

わたしはついに、頭がおかしくなったのかと思った。
でもなぜだろう。心臓はこれほど激しく鳴っているのに、この異様な光景を前にしても恐怖はほとんどない。むしろ、ずっと前から知っていた誰かに、ようやく再会できたような、妙な安らぎさえ感じていた。

立ちはだかる扉の横をすり抜けてアクセルを踏めば、このままいつも通り職場へ行ける。何事もなかったような顔で、今日という一日をやり過ごすこともできるだろう。

見なかったことにするのは簡単だ。
そうだ、これは夢だ。そう思った、そのとき。

龍神りゅうちゃん現れる

「お主。ようやく止まったのう」
「え……いま、しゃべった?」

耳から聞こえたのか、頭の中に直接響いたのか分からない。

「わしは龍神のりゅうちゃんじゃ。気軽にりゅうちゃんと呼んでおくれ」

展開が急すぎて、思考がまったく追いつかない。
龍神だから、りゅうちゃんって名前? ……そのまんまじゃん……

「お主、“そのまんまじゃん”と思ったじゃろ」

ぎくりとした。

「お主の脳内は、わしからしたらスケスケで、全部お見通しじゃい」
そう言って、りゅうちゃんはみるみる縮み、空中でくるりと一回転した。

「わしの体は自由自在じゃ♡」

そのキュートな姿に思わず吹き出しそうになり、肩の力が少し抜けた。

「はじめまして。ミーサです。わたしは『ひみつのマインドラボ』の案内人なの」

少し離れた場所にいる女性の声が、直接脳裏に響いた。
彼女は人間のように見えるけれど、体からはほんのり光の粒子が溢れ出している。

不調の正体

「お主、そんなに曇った顔で、今日はそのまま職場に行くのか? それとも……」
「え? それとも……って何? 他に選択肢、あるの?」
龍と普通に会話している自分に、あとからびっくりした。
「んんん??? ちょ、ちょっと待って! そもそも、あなたたちは何なの? 夢だよね? それともわたしが疲れすぎてる?……」

パニックになりかけて、思わずバックギアに手をかけそうになる。そんなわたしを遮るように、りゅうちゃんの瞳が急に真剣さを帯びた。

「逃げたい気持ちはようわかる。じゃがのう、今のお主にはその時間は残されておらんようじゃ。このまま行けば、お主の魂は枯れて干からびてしまうんじゃ」
「え……? 龍がおどし? 干からびる……?」
「おどしじゃないぞい。愛じゃー! お主、最近不調じゃろ? その正体、教えてやろうかのう」
「ごめん…でも、こんな道路のど真ん中で?」
「安心せい。いま、時間を止めておる」

喉が、こくりと鳴る。

本当の原因

「ほれ、続けるぞい。お主の不調の原因はのう……自分を生きることを忘れていることじゃ」

意味はすぐに分からなかった。でも胸の奥だけが先に反応した。

「意味がわからんかのう? お主は自分を生きることから逃げておる。これ以上傷つくのが怖くて、期待するのをやめた。望むことも、“こうなりたい”と決めることも、全部やめてしまった」

言い返せなかった。図星だった。

「その代わりに手に入れたものがあるんじゃ。知りたいかのう?」
「え? 手に入れたものがあるの?」
「そうじゃ……ずばり、傷つかん毎日と、ときめかん人生じゃ〜!」

言葉が刺さる。その通りだと思った。いつの間にか、わたしは“無難で安全なほう”を選び続けて、子どもの頃みたいなときめきを手放していた。


意図を取り戻す選択

意図せん命は、ただ流されるだけじゃ。」
「それって……委ねるとは違うの?」
“宇宙に委ねる”と“何も決めん”は別物じゃ。お主はハンドルを手放しておる。じゃから、どこにも行けんのじゃ。」

わたしは、まだ車の中にいる。エンジンはかかったまま。
路地を曲がれば、職場の駐車場がある。
でも、どこにつながっているのかわからない、不思議な扉もすぐ目の前にある。

りゅうちゃんが続けた。

「なあ、お主。わしらはただ導く役目じゃ。
流される人生を続けるか。自分のハンドルを取り戻すか。最終的に選ぶのは、お主じゃ。どちらでも良いぞい。お主が決めるんじゃ。」

会社へ行くのか。
それとも車を降りるのか。

車を降りれば、“流されるだけの毎日”からも降りることになる。

ハンドルを握る手が、じんわり汗ばむ。
今ここで変わらなければ、一生変わらない。
考えたというより、体の奥でそう分かった。

扉の向こうへ

わたしは、ゆっくりエンジンを切った。静寂が訪れた。ドアを開け、外に足を下ろす。

りゅうちゃんが、ふっと笑った。
「お主、よう決断したのう」

ミーサという女性も、やわらかく微笑んでいる。
「お主が強めるべきは“意図”じゃ。この扉の先にはのう、お主の意図をはっきりさせる世界が待っておる」

ミーサがそっと手をかざし、光を送ると、扉が音もなく開いた。上へ続く階段。光の粒子が舞っている。

わたしは、ひとつ息を吸い、一歩踏み出した。この不思議な世界に行ってみようと思う。わたしに足りない“意図”を強めてみようと思う。あ、そうだ。でも会社にはちゃんと連絡しておこう。「きょうは会社休みます」って。

そういえばきょうは会社休みます。、綾瀬はるかと福士蒼汰のドラマ、あったよな。青石さんと、年下の彼。名前、なんだっけ……
あ、田之倉くんだ!

「……あ、この車はどうしたらいいの? 大事にしてるんだけど」

こんなときまで冷静で真面目な自分を、ちょっぴり愛おしく、そしておかしく感じた。

「安心せい。全ては整えておる。」

りゅうちゃんが、やけにかっこよく見えた。